歯周病の原因が口臭だと判明した場合は、今すぐ治療を始める必要があります。放置し続けると口臭が酷くなるだけでなく、歯を失う可能性もあるためです。
歯周病の治療は歯医者でできるのかどうか、方法は?費用はいくらかかるのか、歯周病治療に関して気になる点をチェックしてみましょう。
歯周病とは?症状や原因を解説
口臭の発生にはいくつかの原因が考えられますが、厚生労働省の調べでは口臭を訴える人の多くに歯周病がみられると公表しています。
口臭の原因となる歯周病とはいったいどのような病気なのでしょうか。その症状と原因を探ってみたいと思います。
歯周病とは?
歯周病は、歯と歯肉の間に出来る歯周ポケットに細菌が停滞し、歯茎や歯を支える骨に炎症を起こしてしまう病気です。
歯周病の主な症状とは?
歯周病と判断できる症状の特徴
- 口臭が酷くなる
- 歯茎が赤く腫れあがっている
- 歯磨きの際に出血を伴う
- 歯が長くなった気がする
- 歯と歯の間に隙間が出来ている
- 歯茎から膿が出てくる
歯周病になる原因や要因とは?
歯周病を引き起こしてしまう原因に「歯周病菌」の存在が挙げられます。
口の中にはおおよそ300~500種類の細菌が住んでいると言われており、歯周病菌もほとんどの人の口の中に存在し、人間が持っている常在菌の1つと言われています。
健康な20代までの人はほとんどなることの無い病気ですが、年齢と共に口内環境が悪化し、歯周病の発症リスクは大変高くなると言われています。
歯周病菌は、嫌気性菌ですので空気に触れない歯周ポケットの中を好み、深いところに住み着きます。
歯周ポケットが深くなればなるほど菌が住み着きやすくなり、歯肉に炎症を引き起こし、徐々に歯茎の下にある骨を溶かしてしまうのです。
溶けた骨により、大きくなった溝にはさらに菌が住み着いてしまいます。
この悪循環の繰り返しから歯周病がどんどん進行し、最悪の場合歯が抜け落ちてしまうのです。
また細菌は、歯磨き等が十分でないと歯の表面に粘着性の強い歯垢(細菌と代謝物のかたまり)となって付着してしまいます。
ちなみにこの歯垢1mgの中には10億個以上の細菌が住み着いており、特に歯周病を引き起こす歯周病菌が最も多く存在してしまいます。
歯垢を早めに取り除かないと歯石となり、さらに細菌が繁殖し歯周病を進行させる結果を招いてしまうのです。
これ以外に考えられる要因
- 口の中が不衛生
- 砂糖の過剰摂取
- 不規則な食生活
- 喫煙
- 糖尿病や骨粗鬆症といった全身疾患
- 不適合なかぶせ物や義歯
- 薬の長期服用
これらの要因も歯周病の原因あるいは進行を早める要因と考えられています。
歯周病になると口臭が発生してしまう原因
歯周病の代表的な症状として「口臭の発生」がよくあげられます。歯周病と口臭にはどのような関係があるのでしょうか。
歯周ポケットにできた膿が臭いを発する原因になる
歯周病になってしまうと歯茎が炎症し、ブラッシングや食事などの刺激が加わることですぐに出血してしまうという特徴を持ちます。
さらに進行すると歯周ポケットの奥からも出血するようになり、やがて膿が出るようになってしまいます。
この歯茎から膿が出ている症状を「歯槽膿漏」といい、歯周病がかなり進行している状態を表します。
この歯茎から排出される膿は大変不快なニオイを発生しますので、この膿のニオイが原因で口臭が酷くなると考えられています。
歯周病の原因菌である揮発性硫黄化合物が臭いを発する原因になる
歯周病で口臭が酷くなるのは、歯周病菌が発生する「揮発性硫黄化合物」が原因の1つとも考えられます。
この揮発性硫黄化合物は、卵の腐ったようなニオイの硫黄水素と野菜の腐ったようなニオイのメチルメルカプタン、ゴミのニオイのようなジメチルサルファイドの3つがまじりあって独特なニオイを発しています。
歯周病にかかると、歯周病菌がメチルメルカプタンを多量に生成してしまうため、野菜が腐敗したようなニオイが強くなります。
またジメチルサルファイドも歯周病の進行とともに増え、口内の粘膜やタンパク質を分解し、腐敗臭を放つ特徴を持っています。
これらの要因が重なり、口臭の原因となっているとも考えられるのです。
今すぐ自分が歯周病かどうかを自己チェック
歯周病は口臭の原因となる以外にも、口内環境を悪化させる怖い病気です。
自分の歯が歯周病に侵されていないか、簡単に確認する方法がありますのでチェックしてみましょう。
【セルフチェック方法】
- 起床時に口の中がベタついていて気持ち悪い
- ブラッシング時に出血するようになった
- 口臭が気になりだした
- 歯茎がはれている
- 歯が長くなった気がする
- 歯の表面がざらざらしている
- 歯と歯の間に隙間が出来始めた
- 歯茎が赤い、どす黒い色をしている
この他、歯周病の症状に匹敵する状態を発見した場合、歯周病になっていると判断できます。
歯医者さんでの歯周病治療方法
歯石が歯に付着した段階で、すでに自宅のブラッシングでは取り除くのが難しいように、歯周病になってしまった場合は歯医者さんでの治療が必要となります。
どのような治療となるのか、7つの方法と、治療に要する期間と費用をご紹介します。
【スケーリング】にかかる治療期間・費用
スケーリングは、歯に付着した比較的柔らかい歯石を取り除く治療です。
スケーラーと呼ばれる専用機器を用いて除去しますが、きちんと歯が磨けている人や定期的に歯垢・歯石除去をしている人は比較的早く治療が終わります。
治療期間 | 1回・30分程度 |
費用(保険適用) | 1回1,000円前後 |
※保険診療では一度に全体の歯石除去治療が認められていないため、歯石が多い場合は数回に分けての治療が必要。
※回数には個人差あり
【デブライドメント】にかかる治療期間・費用
スケーリングでは取り除くことが出来ない、歯肉の中の歯根に深くこびりついた歯石や汚れを取り除きます。
エナメル質の奥にあるセメント質を傷つけると知覚過敏等の原因ともなるため、治療は慎重に数回に分けて行われるのが一般的です。
治療期間 | 2~4回 |
費用(保険適用) | 3,000~5,000円 |
※症状や歯周病の進行状態によって個人差あり。
【歯周外科治療(フラップ手術)】にかかる治療期間・費用
中度以上のステージまで歯周病が進行している場合に行われる治療方法です。
部分麻酔を行い、歯茎を切開し、目視しながら歯根に付着しているプラークや歯石を除去します。
治療期間 | 2~6ヶ月 |
治療時間 | 1回1時間【本数によりかわります】 |
費用(保険適用) | 1本2,000円程度【歯周病と診断され、初期治療を終えた後フラップ手術が必要と判断された場合】 |
費用(自費) | 1時間50,000~100,000円 |
【レーザー治療】にかかる治療期間・費用
バイオジェルとレーザーを使った最新の歯周病菌殺菌システムです。レーザーの光や熱を利用して歯周ポケット内の歯石を取り除くとともに、細菌を死滅させる治療となります。
照射時間もわずか60秒と短く、痛みや腫れがほとんどありません。このようなメリット点がありますが、治療方法は保険適用外となります。
中度の歯周病に適用される治療方法ですが、実は歯科医院には取り入れていないところも多くありますので、受診前に医院に直接確認することをお勧めします。
治療期間 | 3ヶ月~1年 |
治療回数 | 1~3回【治療回数に個人差あり。】 |
費用 | 1回3,000円 |
【骨移植】にかかる治療期間・費用
この治療が必要となるのは、歯周病がかなり進行し、歯槽骨が溶けて骨が少なくなってしまっている状態です。
骨が溶けることで歯が抜け落ちてしまうため、手術によって溶けてしまった部分に骨を移植し再生させる方法をとります。骨には自分の骨もしくは人工の骨を使います。
自分の骨の場合は移植が必要な部位に近い歯槽骨(顎の骨)から採取するのが一般的で、人工の骨にはハイドロキシアパタイトが使われますが、治療の成功率は人工骨より劣ってしまうというデメリット点があります。
この治療方法も保険適用外、自費での治療となります。重度の歯周病で、大掛かりな手術が必要となりますので治療にかかる期間は長くなり、かかる費用も大変高額となってしまいます。
治療期間 | 1年以上 |
費用(一部保険適用有り) | 20,000円~ |
【エムドゲイン(歯周組織再生治療)】にかかる治療期間・費用
重度の歯周病に対して行われる治療方法です。
歯周病で溶けてしまった場所に、エムドゲイン・ゲル(歯が生える際に重要な働きをするたんぱく質を主成分とした組織再生材料)を注入し、歯槽骨や歯根膜などの組織を回復させる治療です。
保険の効かない治療法で自費での支払いとなり、歯周病の末期と言われる状態ですので、治療にかかる時間・期間も大変長くなります。
治療期間 | 1年以上が目安 |
手術時間 | 1時間 |
費用 | 80,000~100,000円 |
【GTR(歯周組織誘導法)】にかかる治療期間・費用
本来歯周病によって無くなった骨は再生しませんが、特殊な膜を骨の欠損した部分に貼り付けて、歯槽骨や歯周辺組織を再生させる治療です。
この治療法が適用されるのも、歯周病が末期の状態の場合となり、治療後に骨や組織が再生するまで、約1年程度は必要です。
治療期間 | 1年以上 |
費用(一部保険適用有り) | 80,000~100,000円 |
歯周病になってからでは遅い!自分でできる歯周病セルフケア対策
口臭が気になり始めてから歯周病を疑って歯科医院での治療を始めようとすると、治療を終えるまでには長い期間と多額の費用がかかります。
診断を受けるまでに検査やレントゲン、処方箋、メンテナンスと、治療自体の金額以外にも様々なコストがかかることを頭に置いておかなければいけません。
また歯周病という病気は慢性化してしまうため、完治が難しい病気とも言われており、1度なってしまうと一生付き合う病気となってしまいます。
もちろん治療期間や治療費だけが問題ではありません。
歯周病が原因で引き起こされる様々な病気も報告されていますので、歯周病になってしまってから後悔しても遅いのです。
歯周病にならないように、自分でできるケアを考え、今すぐ実行していきましょう。
【歯周病セルフケア対策】
・適した歯ブラシの選択
歯ブラシと言っても、大きさや毛先の柔らかさ、毛質、電動と様々なものが出回っています。
自分の口内に合った歯ブラシを使用しないと、十分なブラッシングは出来ません。
毛先が広がり機能が低下した歯ブラシは交換するなど、些細なこともセルフケアとして大事なポイントとなります。
目安としては2週間に1本、最低でも1カ月で交換するようにしてください。
また、正しい力・圧力で磨くことで、歯周病予防にもなりますし、歯ブラシの能力も最大限に活かすことが出来ます。
・ブラッシングにフロスや歯間ブラシの併用
歯周病の原因となる菌は空気に触れることを大変嫌い、酸素に触れると活動が弱まるという特徴を持っています。
そのため、1日1回はプラークをかき出すようなブラッシングを意識し、菌をかき出すことが大切となります。
また、プラークは歯と歯の間にも付着するため、フロスや歯間ブラシの併用が必須となります。
・定期的に歯医者でチェック
歯周病を予防したいのであれば、定期的に歯科で歯の状態を確認してもらい、アドバイスをもらうのもお勧めです。
歯周病治療が目的では無い場合、診察料等は保険の対象外となってしまいますが、半年に1度もしくは1年に1度チェックすると良いでしょう
・生活習慣の改善
口内の細菌の活動が活発になる要因として、口内環境の悪化と砂糖の過剰摂取があげられます。
そのため食生活を見直し、砂糖の摂取が多いと感じた場合は気を付ける必要があります。
食事に限らず、十分な睡眠をとりストレスを無くすことやてください、禁煙、適度な運動を取り入れていくことも結果的に歯周病の予防となります。
このように、歯周病にならないために予防として取り掛かれることは、とても簡単なことばかりです。
意識するか・しないかで、将来的な口内環境は随分と変わります。
今一度、歯周病という病気がもたらす恐ろしさを認識し、予防対策として出来るセルフケアに取り組んでみてはいかがでしょうか。
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